脊髄神経ネットワークの多様性と筋肉の制御
ぷにぷにアザラシです。
記念すべき初投稿に1週間以上かかってしまいましたが、早速紹介を始めたいと思います。
今回紹介する論文は、
「Spinal Inhibitory Interneuron Diversity Delineates Variant Motor Microcircuits」
という論文です。
私たちは普段何気なく歩いたり、物体をつかんだりすることができますが、そんなことができるのは、体中を覆う筋肉ひとつひとつが、厳密に神経細胞という「電線」によってコントロールされているおかげです。
脊髄というのは、背骨の中に存在する神経細胞の密集した場所で、体のあらゆる部位から「電線」を伝わってきた電気信号を受け取る場所です。脊髄は、神経細胞の最高機関である脳へ「電線」を伸ばしているだけではなく、伝わってきた電気信号を解読して、脳を介さずに電気信号を返信する機能も有します。
例えば熱いやかんを触ると、すぐに手を引っ込めますが、こういう瞬間的な動作は、脳ではなくて脊髄で行われると考えられています。また、普段歩く際も、意識して太ももとふくらはぎの筋肉を動かしたりしないですよね?そういう無意識で行われる動作も一部、脊髄が責任を担っていると考えられています。
しかし、どんな神経細胞が、どんな「電線」を介してこのようなことを行うのかは、まだまだ解明されていません。
今回の論文は、そんな疑問に挑戦した論文です。
この論文のすごいところは、おおざっぱに言うと、
1. 脊髄の腹側と背側に分けて網羅的に遺伝子解析を行い、運動に関連した神経細胞の有する遺伝子を同定した。
2. それら遺伝子を発現する神経細胞が、脊髄内でお互いに違う場所に集まっていることを発見した。
3. それらの神経細胞に対して電気生理学的な特徴付けを行った。
4. 臀部、ふくらはぎ、足首の動きを支配する「電気回路」はそれぞれ異なる神経細胞を介することを示した。
だと思います。
特に1.と2.の発見は大きく、今後の筋肉の動きを制御する神経細胞を研究する人々を先導するような知見ではないかと思います。
4.の発見もすばらしく、私を含めて素人目で見ると、違う筋肉を違う神経細胞が制御するのは当たり前に感じますが、それをこれほどまでにしっかりと証明できるのかと感じると共に、生物の精密な作りに感動しました。
今後、熱いやかんを触った際の、すぐに手を引っ込める動作など、多数の筋肉が協調して瞬時に動くような場合には、どのような回路が必要なのか、そういうことも解明されるのかもしれません。
・・・論文の説明を、生命科学を知らない人宛に初めて書いてみたのですが、やはり難しいですね。。これでも分かってくださる方がどれほどいるか。。
あと、やはり簡単な単語については論文とは別に紹介した方が良い気がしたので、これからは、そういうことも行っていこうと思います。
ではまたよろしくお願いいたします!