ニューロンの嫌がらせ
おひさしぶりです、ぷにぷにアザラシです。最近暑くて死にそうです。。夜家に帰ると室温34℃。。何とかなってくれないものか。
というわけで(?)、今回紹介する論文はこちら!
“Somatodendritic Expression of JAM2 Inhibits Oligodendrocyte Myelination”
です。
以前の記事でも紹介しましたが、私たちのからだの中にニューロン(神経細胞)という「伝線」があって、そのおかげで私たちは体を動かせたりモノを考えたりすることができます。ニューロンというものは「伝線」なのですが、実は伝えられる方向が決まっています。例えば、左から右に情報を伝えるニューロンは、決して右から左に伝えることはありません(ダイオードのようなものですね)。
ところでニューロンの伝達する情報には、音や視界など、私たちがリアルタイムに対応しなければならないモノも含まれます。そのため、ニューロンの伝達は出来るだけ速いほうが都合が良いこともあります。ヒトの体は良く出来ているもので、こういうニューロンの伝達を引き上げるために活躍する細胞が存在します。それがオリゴデンドロサイトです。オリゴデンドロサイトは自分の一部をニューロンに巻き付けることによって「髄鞘」とよばれるものを作り、ニューロンの伝達速度を大幅に引き上げることが出来ます(跳躍伝導とよびます。Wikipediaはこちら)。
このオリゴデンドロサイト、ニューロンがいたらどこでも巻き付くのかといわれると、実はそうではないんです。初めにニューロンの情報を伝達する方向は決まっていると述べました。ニューロンはニューロン同士でつながって伝線を形成しています。その特徴を利用してニューロンの各部位には、下の図のように名前が付いています。前のニューロンから情報を受ける部分を「樹状突起(青)」、情報を後ろのニューロンに投げる部分を「軸索(緑)」と呼びます。オリゴデンドロサイトはこのうち、ニューロンの軸索にだけ巻き付くということが古くから知られています。オリゴデンドロサイトは巻き付けそうなものがあればとにかく巻き付く性質があるのですが、どうして樹状突起など他の部位は巻き付けられずにいるのか、全くもって不明でした。今回の論文は、そんな昔からの不思議を見事に解明したものです。
今回の論文の主な発見は以下の通りです。
- 次世代シークエンサーを用いてJAM2と呼ばれるタンパク質がその原因であると見出した。
- JAM2を自分で作れないように遺伝子操作したネズミでは、オリゴデンドロサイトが軸索以外(ニューロンの細胞体)に巻き付いていることが観察された。
- オリゴデンドロサイトはこのJAM2のシグナリングを介して軸索を選択することが出来ることを見出した。
次世代シークエンサーを用いた研究は昨今盛んですが、今回もその技術を巧みに利用しての大発見だと思います。さらに、その技術で見つけたことをしっかりと遺伝子操作などを利用して証明することで、堅固な論証が出来ていると感じました。
オープンアクセスな記事ではないのであまり詳しいことは書けないので、これ以上はこの論文について書かないようにはしますが、今まで不思議に思われていたことを、こうやって最新の技術を用いて証明できることを目の当たりにすると、昨今の科学技術の進歩はすごいんだなと、安易な表現ではありますがそう感じます。ただ、最新の科学技術があるからといってすぐに大発見が出来るわけではなく、この人たちのように、その技術とすこしのヒラメキを合わせることによって始めて大きな発見が出来るのだと思います。
今回の発見は要約すると、ニューロンがJAM2を出してオリゴデンドロサイトの巻き付きをジャマする、ってことですね!
・・・猛暑なのでこれくらい寒いギャグの方が良いでしょう。。くそぅ。。。
ということで今回はこのあたりで!
次回もよろしくお願い致します!