The Scientific Ocean

誰にでもわかりやすいように生命科学を解説しようとするアザラシのブログ。

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電気を感じる

ぷにぷにアザラシです。2回分、大学の研究の紹介を挟みましたが、今回は久しぶりに論文の紹介をしたいと思います。本日の論文はこちら!

Molecular basis of ancestral vertebrate electroreception

です!
今回のお話は、に関するものです。魚の中には、サメやエイなど、環境中に存在する微妙な電気の変化を感じとって生きているものが存在します。彼らはそういった電気変化を感じることで、お互いにコミュニケーションを図ったり、獲物を捕らえたり、地球の磁場に従って向きを把握したりするわけです。そういった習性についてはよく分かっていたのですが、彼らがどうやって電気を感じているのかについては、全く分かっていませんでした。

そもそも、私たちが感覚(熱い、痛い、くすぐったい、etc...)を感じるのはどうしてでしょうか?これは、私たちの皮膚にある“神経”が、そういった外からの刺激に応じて電気を発生し、その電気を介して脳に情報を伝えるからです。つまり、“神経”が電気を感じとる仕組みを知ることが出来れば、サメやエイが電気を感じとる仕組みも分かるわけです。今回の論文では、エイの電気センサーとして働いている細胞を使って電気を感じとる性質を見つけ出し、さらにはその“電気センサー”の性質も明らかにしたものになります。

  1. エイの電気センサーとして働いている細胞には、電位作動性カルシウムチャネル(Cav1.3)とカルシウム依存性カリウムチャネル(BK)というタンパク質があった
  2. エイのCav1.3は、ネズミにあるCav1.3にくらべて、電気に対する感受性が高かった
  3. エイのBKはネズミにあるBKと性質が異なり、その結果、エイの電気センサーとして働いている細胞がうまく電気に応答するようになっていた

この論文のすごいところは、ちゃんとエイのCav1.3やBKを、他の動物のものと比べて、なぜエイだけが電気を感じることが出来るのか、しっかりと明らかにしているところだと思います(無料ではないので詳しいことを書くことが出来ないのは残念ですが。。)。また、このCav1.3というタンパク質、実はヒトでは耳の音を感じる器官にたくさん存在していることが知られています。実は、エイの電気センサーとして働いている器官は、発生学的にヒトの耳と似たようなものであることは既に知られていて、今回の報告でさらに、そのメカニズムも似ているということが明らかになりました。自然って本当にすごいものだな、と、こういう発見をみると毎回思い知らされます。

もう今の若い人は知らないかも知れませんが、私は昔、ブラウン管のテレビがついているかどうかを、テレビを見なくても当てることが出来ました(今はもうないので、今できるか分かりませんが)。ブラウン管のテレビは電源がつくと、耳鳴りのような高い音がして、それを根拠に判断していたのです。今回の報告と合わせると、もしかすると、ブラウン管のテレビから出ている電磁波が、私の耳のCav1.3を活性化して、その結果ブラウン管のテレビの電磁波を「音」として感じていたのかもしれないな、とふと思いました。あと考えたのは、地震の直前に野良猫がいなくなるなど、よく耳にしますが、もしかするとそういう動物の耳のCav1.3には、まだエイのCav1.3のような電気センサーとしての機能が少し残っているのかも知れませんね。

そんな感じで、今回はエイのお話でした!最後まで読んで下さりありがとうございました!