The Scientific Ocean

誰にでもわかりやすいように生命科学を解説しようとするアザラシのブログ。

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辛さは何倍?

こんにちは、ぷにぷにアザラシです。

最近、Twitterでこんな発言を目にしました。

辛いカレーが好きなので、お初のカレー屋さんに行くと大抵は3倍辛くらいで頼む。そこの辛さの基準が分からないから、最初はこれくらい。で、「なんだ全然いけるじゃん」と思ったら、次は10倍くらい頼むと、まあ〝感覚的に辛さ2倍〟くらいかなと感じている

 

実は私、昔 “辛みセンサー” の研究をしていたので、ここはばっちりお応えしたいと思います!笑

 

人はどうして辛さを感じるのか 

それは、舌に辛みセンサー、通称  TRPV1  というタンパクが存在しているからです。TRPV1は、辛さの正体である カプサイシン と結合して、電気的な信号を生み出します。それが脳に伝わって、辛い!と感じるわけです。

 

ということで、辛さの強さは、TRPV1がどれくらいカプサイシンに反応するか、に依存します。それでは、TRPV1とカプサイシンの関係はどんな感じなのでしょうか?というと、こんな感じになります。

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(値は実験値ではありません、論文データを基に適当に作っています)

横軸を濃度の対数、縦軸を反応率にすると、こんな感じの関係になります。

カプサイシンが10の-6乗 mol/L(1マイクロモル)で、半分のTRPV1が活性化します。

 

この図からわかるように、濃度が高すぎると既に天井に達していて、それ以上は増えませんし、逆に低すぎればほとんど感知することができません

(このカーブは生物学的にはとても大事で、シグモイド曲線といいます)

 

 結論

というわけで、「辛さは単純にカプサイシンの濃度には比例しない、どれくらい辛くなるかは、はじめのカプサイシンの濃度による」というのが、アザラシの答えです。

・・・なんか中途半端な答えですいません、でもこれが事実です 笑

 

ちなみに、カプサイシンの濃度が 0.3 マイクロモルを越えると、辛さを示す注意書きが必要なようです(農水省このページ参照)。ということは「辛い!」と感じる程度では、まだTRPV1は半分も活性化していないということですね。逆に全部活性化したらどれくらい辛いことやら(痛そうです)。。。

 

ちなみに

辛いもの、食べているとだんだんと慣れてきますよね?

実はこれは、辛いものを食べすぎると、TRPV1センサー本体が舌の表面から無くなってしまうのです!だから、辛いものをいくら食べても、既に辛みセンサーが無いので、辛さを感じることができない、というわけです。TRPV1がずっと活性化していると、TRPV1を持つ細胞は死んでしまうので、細胞が自分を守るためにそうするのだと思います。本当の理由は神様しか知りえませんが。。。

 

 

以上になります!読んで下さってありがとうございました!