The Scientific Ocean

誰にでもわかりやすいように生命科学を解説しようとするアザラシのブログ。

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腸から脳へ超特急でお伝え!

こんにちは、ぷにぷにアザラシです。今回はこの論文を紹介します!

science.sciencemag.org

カラパイアのこの記事でも紹介されていましたが、少し言い過ぎ?なところがあったので、ちゃんと紹介します!笑

 

これまでわかっていたこと

 腸と脳のコミュニケーション、これは最近流行の研究分野です。特に、腸内細菌は細菌とっても流行っていて、妊娠中のお母さんネズミの腸内細菌のバランスが良くないと、生まれてくる子供に精神障害傾向になる、なんていう衝撃的な論文も既に報告されています (詳しくはこの論文です)。

 腸には神経が走っているのですが、腸の神経はかなり発達しています(昔この論文も紹介しましたね)。また、脳と腸とは迷走神経という神経で繋がっていることが広く知られています。ですので、腸の神経と脳とのつながりは必ずある、と考えられてきました。迷走神経には脳 --> 腸方向と、腸 --> 脳方向と、両方向の神経線維が走っています。しかし、このうち、腸 --> 脳方向の詳しい仕組みがわかっていませんでした

 

今回わかったこと

 今回の研究者達が発見したのは、どうやって腸の細胞が迷走神経へ信号を送るのか、という点です。具体的には、

  • 腸上皮のエンテロエンドクリン細胞と迷走神経は直接繋がっていた
  • エンテロエンドクリン細胞は、糖を感知して迷走神経へ信号を送っていた
  • エンテロエンドクリン細胞はグルタミン酸神経伝達物質として使っていた

の3点を、細胞レベルだけではなく、マウスレベルで明らかにしました。

 

アザラシ的にすごいところ・感想

 まず驚いたのは、腸には発達した神経回路が存在するにもかかわらず、そんなものすっ飛ばして脳と腸とが1本の神経線維で繋がっていたことです。これは別の言い方をすれば、腸は何の信号整理もせず、とりあえず脳へ信号を送って、あとは脳に任せっきり、ということを示します。確かに目や耳も同じように脳に任せっきりではありますので、腸が糖を感知するという仕組みは、皮膚で痛みを感じるような感じではなく、目でものを見るような感じだ、ということになります。本当に・・・?
(皮膚で感じた感覚は全て、一度背骨の中の脊髄でしっかりと情報制御されてから、脳へと伝えられます)

 その他は、細胞を同定したことはすごいですが、まだまだ分からないことだらけです。特に私は、糖をかけて細胞が興奮するのは他でも知られているので(膵臓β細胞など)、糖以外の栄養(アミノ酸・脂質)ではどうなるのかが気になります。また、最近ケトンダイエットが流行ですが、この神経の活性化と肥満化の関連も気になりました(活性化したら太りやすい、とかだと面白いですね)。

 

何はともあれ、言いたいことはひとつ。

腸は超すげー!

 

・・・失礼致しました。

というわけでこのあたりで!読んで下さりありがとうございました!